連れ去り別居から高額な婚姻費用を請求する「離婚ビジネス」が横行している歴史的背景と、裁判所の制度的な問題点について以下に説明する。
別居時に婚姻費用を請求する制度は昔から存在したが、以前は個々の家庭の生活費や住宅ローンの負担などを詳細に認定していたため、審判に1〜2年もの時間がかかり、今のように頻発しビジネス化することはなかった。
しかし、別居や審判の件数が増加した2003年、裁判所は自らの手間や負担を減らす目的で、収入(源泉徴収票)のみで機械的に金額を算出できる「算定表」を導入した。これにより手続きは大幅に短縮されたが、さらに2019年には弁護士らの意見を踏まえて金額がより高額化された。
算定表の導入により、複雑な事情を考慮されず、別居さえすれば簡単に高額な生活費が取れるようになった。例えば、夫の年収が700万円で妻が専業主婦、小学生の子どもが1人いる場合、別居した月から月額14万円の婚姻費用が確実に請求される。
日本の裁判所は別居が3年続かないと離婚を認めないため、夫側は「月14万円×36ヶ月=約530万円の婚姻費用を払い続ける」か、「モラハラなどを理由に請求される200〜300万円の高額な慰謝料を払って早期に離婚する」かの二択を迫られる。女性側はどちらに転んでも多額の金銭を確実に得られる構図となっており、これが制度のバグとしてビジネスに悪用されている。
この問題の根本的な原因は、裁判所が個別の事情を認定する手間を省き、算定表を用いた画一的な運用を導入したことにある。事前の話し合いもなく勝手に別居を強行し、1年経過しても全く働かないようなケースであっても、裁判所は「子どもが小さくて働けない」という主張だけで全額の支払いを認めてしまう。離婚の引き延ばしに対するペナルティが一切なく、収入だけで簡単に高額請求できる現在の異常な状況は、明らかに裁判所の運用のミスが招いた結果である。
この制度のバグを解消し、離婚ビジネスの横行を防ぐためには、以下の運用変更が必要不可欠である。
片山ひでのり法律事務所
弁護士 片山栄範
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