日本の単独親権の下では、親子断絶(離婚後に子どもと別居親が会えなくなって、連絡も取れなくなってしまうこと)が多発しています。
今の日本では、子どもをある日突然連れ去られて、その後ほとんど会えないという悲劇が多発しているのです。
これは、日本が単独親権制度をとっていることと、子どもの連れ去りが違法とされていないためです。
なお、主要先進国24カ国中、単独親権だけなのは、日本の他にはトルコとインドだけです。
私のところにも、かわいい盛りの子どもをある日突然連れ去られて、その後面会もできないという相談が数多く来ています。
父親からの相談が多いですが、母親からの相談もあります。
もちろんDVしていた親を、子どもと無理やり面会させることには問題があるでしょう。
しかし現在の家庭裁判所の運用では、DVなどなく、特に問題がなくても、監護親が認めない限りは、面会できないことが多く、家庭裁判所が監護親に面会させるようにと強制することはありません。
そのため、子どもを連れ去られた後、自分で面会交流調停を申し立ててあっても、1年、2年と月日が経ってもまったく面会できないということが多発しています。
父母が離婚しても、子どもと親との関係は変わらず続くべきです。
面会は子どもが健全に成長していくためには不可欠であり、また子どもと引き離された親にとっても、子どもの成長を見守るための大切な機会です。
連れ去りされた親の方からの案件は、正直申し上げて、困難なことが続きます。弁護士に依頼したとしても、すぐに劇的に状況が改善するということはありません。
正当な理由もないのに面会を拒否されている場合、監護親の言い分を一つ一つ解決してくいくしかありません。
忍耐強く進めていくしかありません。
面会交流できる場合できない場合
面会交流調停での「子の福祉」という判断基準
面会交流については、「子の福祉」を考慮して行うことになっています。
ただ、この「子の福祉」という概念がクセものです。
面会交流調停では、度々出てくる「子の福祉」というキーワードの意味は多義的であり、場面によってその都度意味が変わってくるので、一般のみなさんにとっては、理解が難しいと感じています。
静岡家庭裁判所で、面会交流調停や審判(裁判のこと)を多数行って来た経験からすれば、「子の福祉」というキーワードの内容は、子どもの年齢や発達の度合いで、変わってきます。
例えば、3歳の児童と、中学生、または高校性の場合では、「子の福祉」の意味も、当然変わってきます。
幼児や、小学校低学年ぐらいまでの場合には、特段、父親や母親に問題がなく、実際に監護をして面倒を見ている相手方に配慮した対応ができる場合には、子どもに父や母との絆を確認させるために、面会をさせる方が「子の福祉」にかなうというのが、家庭裁判所の一般的な考え方です。
小学校高学年・中学生・高校生
中学生や高校生、時には小学校高学年の子どもの場合には、少し事情が違ってきます。
本人が父または母に会いたくないと言った場合、それを無視して面会を実施することは、実際、難しいですし、強制的に父または母に会わせることは、子どもの今まで形成されてきた人格の否定につながるため、「子の福祉」に反していると考えられています。
したがって、子どもの意思に反してまで面会交流させることは難しいでしょう。
このように、子どもが小学校高学年以上になってくると、子ども本人の意思が尊重されます。
以上のように、家庭裁判所は、それぞれの子どもの人格形成過程に沿った判断がされていくべきだと考えており、これは静岡家庭裁判所の調停や審判でも一緒です。
調査官調査で大切なこと
家庭裁判所で離婚調停と並行して子供の面会交流の調停が行われる場合には、双方の親の利害対立が激しいため、これを調整するために、家庭裁判所が調査官を任命し、調査官調査を実施し、子供の状況などを調査します。
その調査官の意見を元に、裁判官と調停員で構成する調停委員会が、面会交流調停を進めます。
この場合、弁護士は、調停に同席することで、今までの経験から調査官の調査がどのような点について行われるかなど適切に依頼者にアドバイスをし、依頼者と共に調査の準備をすることができます。
調査官の調査によって調査報告書が作成されますが、これが調停での調停委員会の意見を左右しますので、面会交流調停においては、調査報告書は、大切なものです。
依頼者は、弁護士がいることで、自分が手続きにおいてどの方向に進んでいるか、次はどのような調査があるかなどについて、適切にアドバイスを受けることができます。
そして、依頼者にとっては、この事前の準備が心理的な余裕を生みます。この点が、当事者が精神的に大きな負担を負っている調停では、結論を左右します。
調停での調査官の調査は、調停での話し合いが決裂して、不調になり、審判(審判は、調停のような話し合いではなく、裁判の一種です。)に移った場合でも、審判に引き継がれ、裁判官の判断に大きな影響を与えます。
この点からも、調査官調査に、心理的な余裕を持って臨むことが、とても大切になってきます。
監護親が再婚した場合の面会交流
離婚後に、子どもを監護している側の親が再婚して、子どもを再婚相手の養子にした場合の面会交流は、様々な問題があります。
ここでは、離婚した母親が子どもを監護していたものの、新しいパートナーと再婚して、子どもを新しい夫の養子にした場合を考えます。
このような場合、母親としては、再婚したパートナーとの関係から、自分の離婚した元夫とのことは触れたくないと考えるのが一般的ですし、また、子どもが幼い場合には、新しい家族になじませて落ち着かせたいからと言って、母親が父親との面会を取りやめようとする傾向があります。
3,4歳の児童は、柔軟性が高く、新しい環境にもすぐに順応することもあって、母親が、父親を忘れてもらって、再婚相手を父だと思って欲しいという気持ちが、母親に強く出てきてしまうため、父親との面会交流が難しくなってしまうのです。
また、例えば妻が再婚して、再婚相手が子どもを自分の養子にした上で同居する場合を考えます。
この場合は、父親としての扶養義務がなくなると考えられています。
これは、養育費を払わなくて良くなるという点では、子どもと離れて生活している父親には朗報です。
しかし、子供を監護している母親からすれば、父親からお金もらうわけでもないので、煩わしい相手との関係をなくしたいとう強い気持ちが生じます。
私が、実際に静岡家庭裁判所での面会交流調停を数多く扱う中で、子どもがまだ小さい場合、母親が再婚すると、父親にとって面会交流のハードルは確実に高くなることを、実感として持っています。
また、子供の年齢や状況によっても異なりますが、母親と父親の関係が良くない場合にも、離れて暮らしている父親にとって、面会交流のハードルは高くなります。
ただ、裁判例としては、再婚して再婚相手の養子にしただけでは、面会交流はそのまま認められるというものがあります。
以上のお話は、子どもが幼い場合ですが、子どもが中学生ぐらいになっている場合については、すでに子どもの人格が相当程度確立していますので、母親が再婚したからと言っても、それまでの面会交流がそのまま変わられず続けられる場合が多いです。
子どもに対するの面会交流は、暴力的な夫が相手でも、認められるべきでしょうか?
面会交流はあくまでも子どものためという観点から判断されるものですから、例えば離婚した妻が元夫に子どもを絶対に会わせたくないと考えたとしても、それだけでは元夫の面会交流が認められないわけではありません。
ただ、相手が、過去の子どもとの面会交流の際に、子どもに悪影響を与える態度をとっていた場合や、かつて相手が子どもと一緒に暮らしていた間に、相手の言動に対して子供が恐怖を感じていたような場合には、
面会交流をすることについて、否定的な判断、すなわち面会交流を認めないという判断が下される場合もあります。
片山ひでのり法律事務所
弁護士 片山栄範
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