2026年4月1日から施行される改正民法(共同親権)により、「連れ去り別居」に対する法的な評価や実務は大きく変わる。法改正によって直ちに連れ去りが違法となるわけではないが、新設された条文とその解釈により、現状の連れ去り横行に歯止めをかける強い期待が持てる。
これまで、婚姻中の状態であっても「親権の行使」について明確に規定する条文がなかった。そのため、一方が子どもを突然連れ去って生活圏を変えるという重大な問題が、正面から「親権の侵害」や「監護権の侵害」として評価されてこなかった。実務上は「監護の継続性」の理論が優先され、連れ去られた側の親権や子どもと一緒にいる権利については全く言及されないまま、連れ去りが容認される審判が多く出されていた。
今回の改正民法で新設された「新824条の2」では、婚姻中の共同親権状態において「親権は共同して行使する」という大原則が明記された。これにより、もう片方の親の親権についても法的に明示されることになり、相手の同意なく勝手に単独で事を行うことは、双方の親権行使を侵害する「違法な行為」と評価される土台がようやく完成した。
新法では、原則を共同行使とした上で、例外的に単独で親権を行使できるのは「急迫の事情があるとき」のみであると明記している。これを反対解釈すると、急迫の事情がないにもかかわらず単独で親権を行使すること(=連れ去り別居)は正当化されず、違法と判断される。
例えば「相手からDVを受けていた」として子どもを連れて別居する場合、今後は連れ去る側が裁判所に対して「DVなどの急迫の事情があった」という事実を自ら説明し、証拠を出して説得しなければならない構造へと変わる。これを立証できなければ、相手の親権行使を侵害した違法行為となる。
この「急迫の事情」の立証という新しい構造が正しく運用されれば、正当な理由のない虚偽のDV主張や、不当な連れ去り別居は大幅に減る。急迫の事情がない連れ去り別居が違法と解釈されるようになれば、その後の親権獲得や監護権獲得において極めて大きなマイナス事情として作用するため、現在のひどい連れ去りの横行をなくす強い抑止力となる。
ただし、いくら条文が整っても、裁判所が新法を無視して従前通り「監護の継続性があるから良い」と判断してしまえば、今回の民法改正は全く意味のないものになってしまう。今後の裁判所が、「急迫の事情がない連れ去り別居は違法である」という真っ当な解釈と審判をしっかりと出して運用してくれるかどうかに、今後の実務の動向が大きくかかっている。
片山ひでのり法律事務所
弁護士 片山栄範
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